出典元:オリコン
5年前の夫の急死後、女手ひとつでADHD&ASDの発達障害を持つ8歳の長男・けーくんと、現在6歳になる次男・しーちゃんを育ててきたせせらぎさん。シングルマザーとして2児の子育ての葛藤や孤独、喜びを描いた『旦那が突然死んだので発達障害児を一人で育てることになりました』(竹書房)は、長男が発達障害と診断された時、安堵するせせらぎさんの率直な想いが描かれたところからスタートする。この想いの真意とは? 話を聞いた。
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■夫の死を悲しむ間もなく片親で二児の子育て「自分の大変さが一般的な大変なのか判断できなかった」
――本の反響はいかがですか?
【せせらぎ】レビューは見ないようにしているので、反響はあまり分からないんです(笑)。子育てに関してはそれぞれの思いもあるし、私は正しき母親の素敵な姿とはちょっとズレていると思うので。
ただ、同じような子を育てている方が、少しでも楽になってくれたなら、それはすごく嬉しいです。発達障害のことって、お医者さんや福祉の方と、プロの方でもいろいろな考え方があるんです。でも、少し知識のある方は「こうした方がいい」とアドバイスをするのですが、深く関わったことのある方は、「お母さんは何もしなくていい。お母さんが楽でいることが何より一番だ」ってことに辿り着くんです。
――本にも、「私は育てなきゃを手放した」という言葉がありました。
【せせらぎ】子どもには幸せになって欲しいし、周りの目もあるから、ずっと私が教えてやらせなきゃと思っていたんです。父親がいないので私しか言う人がいないし、今後のけーくんのために、できないことは直さなければいけないと。でも、けーくんも私の言うことを分かってはいるんだけど、抑えがきかない。注意するたびに、「またできなかった、僕がダメなんだ」と負のスパイラルに。それで、良くない現状を打破するために考え得る全てのことをやろう、療育の塾や病院、区の相談所など色々なところに行ったんです。
――そこで言われたのが、「お母さんは何もしなくていい」だったんですね。
【せせらぎ】スクールカウンセラーさんの言葉でした。衝撃と同時に救われました。けーくんの習いごとの先生にも、「ひとり親なんだから、飴かムチだったら、絶対に飴になった方がいい」と言われて。お母さんが怒っている横で、お父さんが「大丈夫だよ」って言ってあげる役割分担ができないから、両方持てないなら飴がいい。その言葉で、かなり楽になりました。私は、色々な先生に密告すればいいだけなので(笑)。
――最初に、「けーくんが発達障害と診断されて安心した」という言葉も印象的でした。
【せせらぎ】旦那が死んでしまって大変だし、子育て自体も大変だし、自分の大変さがいわゆる一般的な大変なのかも判断できなかったんです。保育園やお医者さんに「言葉が遅いんです」って相談しても、「まだ小さいから大丈夫」と言われて。それでもすごく大変で、いっぱいいっぱいだったから、発達障害児専門のお医者さんに「あー、この子は大変だ」って言われた時、すごく安心しました。よかった、プロの方から見ても、大変な子だったんだって。私は大変だったんだって。
――それまでの大変さや頑張りを認めてもらえた気がした?
【せせらぎ】はい。小学校に行くにも、診断があるのとないのでは受け取ってもらい方もだいぶ違う。診断を受けたことで、色々な面で進みが早いのも助かりました。