ソ連全体主義社会を描き出す「DAU」プロジェクト第2弾公開決定 6時間9分の黙示録(オリコン)

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出典元:オリコン

第70回ベルリン映画祭で銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞し、今年2月27日よりシアター・イメージフォーラム(東京)ほかで世界初となる劇場公開された映画『DAU.ナターシャ』。前代未聞の手法でソ連全体社会を赤裸々に描き出し、全国45館で拡大公開され、ミニシアター・ランキングの上位に長期に渡ってラインクインした。この反響を受け、「DAU」プロジェクトの劇場映画第2弾、『DAU.ナターシャ』で描かれた、ソ連全体主義社会のその後の世界を描いた『DAU. Degeneration(原題)』が、『DAU. 退行』の邦題で8月28日よりシアター・イメージフォーラムほかで限定公開されることが決定した。

【動画】ソ連全体主義社会を描き出す『DAU. 退行』予告編

 『DAU. 退行』は、実に6時間9分にも及ぶ大長編であり、『DAU. ナターシャ』が描き出したスターリン体制下の1952年から10年以上が経過した1966年~1968年が舞台となる。この時代はキューバ危機の後、フルシチョフ時代を経て、スターリンが築き上げた強固な全体主義社会の理想は崩れはじめ、人々は西欧文化にも親しむようになっている。

 前作ではカフェのウェイトレスであるナターシャの視点で閉鎖的かつ断片的に描かれた秘密研究所が、本作では一転、カメラは研究所内部に入り込み、さまざまな人々の複雑な人間模様や共産主義社会の建造物をよりダイナミックに映し出す。

 本作を手掛けるロシアの奇才イリヤ・フルジャノフスキーは、処女作『4』が各国の映画祭で絶賛を浴びると、「史上最も狂った映画撮影」と呼ばれた「DAU」プロジェクトに着手。それは、いまや忘れられつつある「ソヴィエト連邦」の記憶を呼び起こすために、「ソ連全体主義」の社会を完全に再現するという前代未聞の試みだった。

 ウクライナの大都市で、かつてはソ連の重要な知性・創造性の中心地でもあったハリコフに欧州史上最大の1万2千平米もの秘密研究所のセットを作り、実にオーディション人数約40万人、衣装4万着、主要キャスト400人、エキストラ1万人、撮影期間40ヶ月、撮影ピリオドごとに異なる時間軸、35mmフィルム撮影のフッテージ700時間という莫大な費用と15年以上もの歳月をかけて「DAU.」の世界が作り上げられた。

 本作で共同監督を務めたイリヤ・ペルミャコフ監督は、「国家が社会的に荒廃していく状況が迫ったときに、どのように気づき、対処するかを、映画という媒体を通して学ぶことはとても重要だと思います。本作は、権力の上層部が超過激派達と、どのように関わっているかという問題を扱っており、単に分析するだけでなく、これらの状況を見たときに皆さんに深く感じて欲しいのです」と語っている。

 この超大作を観れば、第1弾『DAU. ナターシャ』をパズルの1ピースとする、『DAU.』の広大な一枚絵が見えてくる。スタンリー・キューブリックの『時計仕掛けのオレンジ』やジョージ・オーウェルの代表作「1984」が描いたディストピアを現代にアップデートさせ、その先の深淵に迫ろうとするような鬼気迫る一大叙事詩に、映画評論家の柳下毅一郎氏は、「十年に一度の衝撃!」とコメントを寄せている。

 ファシズム、優生学、性搾取、差別……人間の暗部を余すことなくえぐり出し、現代社会への警鐘を鳴らしている本作だが、このコロナ禍によって正当に評価される機会を大きく逸しっている(米批評家サイト、ロッテントマトのレビューは2021年7月16日現在、3つしかない)。また本国ロシアでは上映禁止となったいわくつきの作品だ。日本では1作目の『DAU. ナターシャ』が好評を博したことで、2作目にして完結編ともいえる『DAU. 退行』が世界で劇場初公開されることになった。

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