[映画.com ニュース]2007年の「タネ」でデビューした、大力拓哉と三浦崇志による第62回ロカルノ国際映画祭コンペティション部門出品作「ニコトコ島」(08)と、第7回ローマ国際映画祭招待作品「石と歌とペタ」(12)。海外の高い評価にもかかわらず、映画祭以外ほとんど上映される機会がなかった2作が劇場公開する。両作共に大力と三浦が出演し、3人の男が大阪弁で他愛もない会話をしながら、ゆるい雰囲気の中で旅をするが、スクリーンに映る映像は力強い。どんな映画にも似ていない、唯一無二の映像表現を続ける両監督に話を聞いた。
【動画】「ニコトコ島」「石と歌とペタ」予告編
――おふたりは幼なじみだそうですね。
三浦(以下:三)「小学校から一緒の学校だったんですが、仲良くなったのは中学校に入ってからです。中学校のとき、僕はサッカー漬けだったんです。それまで僕は、映画や文科系のこと全然興味なくて。大力君に音楽と映画を教えてもらってはまりましたね」
大力(以下:大)「『パピヨン』がテレビでやるからって、薦めたんです」
三「深夜2時からの放送で、3時間近くある映画だったけれど、集中して見ることができて、終わった頃には外が明るくて、すずめが鳴いてて……。なんかすごい経験をしたな、映画ってすごいなと思ったんです」
大「あとは遊びの延長で、友達のおばちゃんに借りたビデオカメラを回すようになって、そこからだんだん映画を作ってみたいなと考えるようになって。その後、ふたりとも別の映画学校に進んだのですが、三浦くんの卒業制作の作品をふたりで作ることになったんです。その関係が、現在までそのまま続いているような感じです」
三「卒業制作で初めて1時間の作品を撮りました。クラスで2作品だけ選ばれて、映画館で上映されるというものなのですが、それに選ばれて。他人に評価されて、映画館で自分たちの作品を見れたのがとてもうれしくて、今でも映画を作り続けています」
――2作品ともセリフのゆるさとは対照的に、映像はとても力強く、遊び心に溢れています。
三「ロケハンに行って、いい場所を決めて、画角も探してそのとき撮る日もあるし、一旦、どう歩いていくとかを決めなおしたり。交代で運転して、ふたりで見に行って、その繰り返しです。どちらかが主導して決めるということはないですね」
――「ニコトコ島」「石と歌とペタ」。タイトルにもなっている、ユーモラスな名前の由来は? シンプルなのに練られていて、はっとさせられるような言葉遣いも魅力的です。
三「一応、ニコニコ、トコトコという……(笑)。深い意味はありません。でも、いろいろ話し合って候補は出すんです。脚本はないのですが、撮った映像を見ながら、ふたりで適当に話をするんです。それを録音して使うこともあるし、セリフを考えて書き出すこともあります。消去法で、こういう言葉は使いたくないとか、そういうところから選んでいくことが多いですね」
――大自然の静寂の中や、登場人物のささやく声の中、音が丁寧に使われている印象を持ちました。
大「映画って音が大事だと気付く瞬間があると思うんです。それに気付いてから、他の作品の見方も変わってきましたし、音にこだわるようになりました。『石と歌とペタ』は、一緒に出演している松田圭輔君が音楽をやっていて、ああいう曲をたくさん作っているんです。それがおもしろいので、映画の中で歌ってもらいました」
――派手な映像的な仕掛けも、ドラマチックな人間関係もありませんが、両作共に鑑賞後にとても良い気分になる作品です。まるでおふたりの穏やかな人柄が反映されているようですね。
三「ぜんぜんケンカもしないのですが、殴り合いとかしたほうがいいのかな(笑)。ピシッと作風をそろえようという意識はなくて、新しい作品を撮るときは、新しいことをしようと思ってるんですけど、途中段階からいつも一貫しているものが見えてきます」
大「1作ごとに、全く違うものを作っているつもりですけど(笑)。映画はいろんな作品を見ますし、エンタメ作品もものすごく好きなんですけど、自分たちで作るとこういう作風になるんです」
――どんな映画にも似ていない、オリジナリティあふれる作風です。
三「よくわからないけどすごいなって思ってもらえるのが一番うれしい。他の人の作品でもそういうのが好きですね」
大「なんかわからないけど、パワーがめっちゃある、そういう感じを出したい」
――アイディアはどのように出していくのでしょうか? 次回作の構想は?
大「週1くらいで会っているので、何が面白かったとか他愛もない話をして、それをメモして溜まっていったものが、次の映画の企画になります」
三「シナリオなく作っているので不安な部分もありますが、新作の見た目はだいぶ変わる予定です」