スコセッシが製作総指揮「ザ・バンド」のドキュメンタリー、20代の新鋭監督が撮った理由(映画.com)

出典元:映画.com

マーティン・スコセッシ、ロン・ハワード、ブライアン・グレイザーらが製作総指揮として参加し、1967年から76にかけて主に米国で活動した音楽グループのドキュメンタリー「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」が10月23日公開される。ボブ・ディランら世界的なミュージシャンたちからリスペクトされるバンドの軌跡に追ったダニエル・ロアー監督に話を聞いた。

【動画】「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」予告編

 映画は「ザ・バンド」メンバーのロビー・ロバートソンが2016年に発表した自伝「ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春」をもとに、バンドの誕生から、彼らがボブ・ディランとともに借りていた住居「ビッグ・ピンク」でのレコーディング、そして伝説的解散ライブの「ラスト・ワルツ」まで、バンドがたどった足跡をたどるほか、ブルース・スプリングスティーンやエリック・クラプトンをはじめとした大物ミュージシャンが多数登場し、「ザ・バンド」の唯一無二の魅力を語る。

――あなたも、「ザ・バンド」メンバーのロビー・ロバートソンらと同様、カナダのご出身と伺っています。本作の監督をすることになった経緯、あるいは企画の成り立ちを教えてください。

 僕はカナダのオンタリオ州出身で、自然の豊かな土地で生まれ育ちました。毎年、夏になると、父が僕と兄をキャンプに連れて行ってくれたんです。その時、湖でボートに乗せてくれた父がいつも歌ってくれる歌があり、それがザ・バンドの有名な曲のひとつである「Up On Cripple Creek(アップ・オン・クリップル・クリーク)」でした。僕はその曲が大好きで自然と覚えるようになり、歳を重ねる毎にバンドへの興味もどんどん大きくなっていったんです。

 そして4年前(2016年)になりますが、ギターのロビー・ロバートソンによる自伝本が出版されました。早速、読んでみたところ、あまりに素晴らしく「これを映画化するなら自分しかいない!」と思いました。それで、映画の企画をあちこちへ持ち込み、耳を貸してくれる人にアピールしたんです。しかし残念ながら、当初は僕ではなく別の監督に話がいってしまったんですね。その時はがっかりしました。でも、後になってその監督が降りることになり、結果的に僕のところに話がもどってきたので、その時は夢のように感じました。

――本作のメインタイトルは「ONCE WERE BROTHERS」ですが、これはロビー・ロバートソンがスコセッシ監督の映画「アイリッシュマン」で提供した楽曲の名前ですね。この作品でも義兄弟ともいえるバンドのメンバーの絆がテーマに描かれています。企画の段階からこの辺りを意識していましたか?

 「スコセッシ監督と同じテーマで、同じ楽曲をモチーフに映画を撮りました」と言えたら最高なのですが、実際は偶然なんです。でも、「ONCE WERE BROTHERS」という曲は「兄弟愛」をテーマにしている曲で、ロビー・ロバートソンはそれをテーマに音楽を作り続けている人です。同様に、スコセッシ監督も「義兄弟」をテーマに映画を作り続けているので、「アイリッシュマン」でロビーの楽曲が使われることは自然なことなんだと思います。

――「ONCE WERE BROTHERS」というタイトルから感じられる哀愁や切なさよりも、バンドの青春時代の部分の描写が若々しく感じられました。20代の若いあなたが監督を任されたことには、「若い世代へ、ザ・バンドの素晴らしさを継承していきたい」という狙いもあったのでしょうか?

 良い質問ばかりで嬉しいです。実は、ロビーと初めて会った時、ロビーは僕に昔の自分の面影を見たと話していました。僕は「この映画を作るためだったら何でもする」と伝えていたんですが、そうした情熱にかつての自分を見てとったようでした。僕自身、本作を通じて、ザ・バンドの魅力を自分と同じ、それより若い世代に広められると確信していましたし、ロビーもそれをとてもクールなことだと捉えてくれたんです。同様に、僕も改めて自分と同世代のザ・バンドのファンと出会えたことは大変嬉しいことでした。

――トロント映画祭でのオープニングに参加されたそうですね。オープニングを迎えられたときの気分はいかがでしたか?

 僕はカナダのトロントで育ちましたが、トロント映画祭はカナダでも最も文化的に重要なイベントです。大勢のお客さんやセレブリティも数多く来場します。オープニングをホームタウンで迎えられるということは、素晴らしすぎて言葉もありませんでした。会場となったトンプソン・ホールのステージに立った時は、感動で涙が出てくるほどでした。その時、頭に浮かんだのは、ドキュメンタリー作家になりたいという僕を応援してくれた両親のことだったり、制作で大変なときに助けてくれたガールフレンドや兄のことでした。

――映画祭で観客からの印象的なリアクションなどがありましたら、教えてください。映画祭以外でも結構です。

 実は、今朝、ロビーのマネージャーからメールが送られてきて、エリック・クラプトンがこの映画を見てくれて、「最高だったよ!」とのことでした。彼は気に入って2度も見てくれたんだそうです。トロントのオープニング上映の時は、上映後にQ&Aがあって観客から感想を聞けたのも素晴らしい経験でした。「自分たちの若かった頃に戻れたようだった」とか、「ザ・バンドへの愛がより深まった」とか言ってくれて、どのくらい自分の作品を愛してくれたか伝えてくれて嬉しかったです。

――本作を監督してザ・バンドに対するあなた自身の認識や印象が変わった、ということがあれば教えてください。

 変わりました。もともとザ・バンドは僕のヒーローで伝説の存在でした。絶対的なアイコンみたいなものです。でも、本作を通じて理解したことは、彼らは同時にごく普通の不安も抱えた壊れやすい若者たちでもあったということです。しかし、そのことによって、より彼らに共感することができ、より人間的に感じることができました。4人はそれぞれに美しくユニークな人間で、彼らの友情は音楽の力を通じて育まれたものなんだなとあらためて思いました。

――日本でこの映画の公開を待っている観客の皆さんにメッセージをお願いします。

 やはり、ザ・バンドの音楽がどのように生まれてきたのか、彼らの音楽のルーツを知ることを楽しんでいただきたいです。1時間41分の間、このバンドが持っていた神秘的な部分、彼らの世界観、そして、ザ・バンド以降の音楽に対して彼らの存在がいかに大きいか、音楽にどんな風に影響を与え貢献したのか、新鮮な目で体験してもらえればと思っています。

 10月23日から角川シネマ有楽町、渋谷WHITE CINE QUINTOほか全国順次公開。

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