【国立映画アーカイブコラム】これまでと少し違う、開館に向けて(映画.com)

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[映画.com ニュース] 映画館、DVD・BD、そしてインターネットを通じて、私たちは新作だけでなく昔の映画も手軽に楽しめるようになりました。それは、その映画が今も「残されている」からだと考えたことはありますか? 誰かが適切な方法で残さなければ、現代の映画も10年、20年後には見られなくなるかもしれないのです。国立映画アーカイブは、「映画を残す、映画を活かす。」を信条として、日々さまざまな側面からその課題に取り組んでいます。広報担当が、職員の“生”の声を通して、国立映画アーカイブの仕事の内側をご案内します。ようこそ、めくるめく「フィルムアーカイブ」の世界へ!

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、自由な外出も映画館で気軽に映画を見ることもできない日々が世界中で続いていますが、各国の映画関係者・映画ファンは、大事な映画の灯を絶やさないために、できる限りの活動をしています。日本では多くの地域でそれぞれの映画館が慎重に準備をすすめ、上映再開の緒につきました。

 国立映画アーカイブは現在、館内の一部リニューアル工事で休館中ですが、工期の変更により、開館日も当初の5月29日から延期することになりました。こうした状況をふまえ、今回のコラムでは予定を変えて、次の開館に向けた当館の活動や館外からでも利用できる動画のオンラインサービスについてお届けしたいと思います。

 リニューアル工事では、主に建物の入り口や1階のエントランス、2階の長瀬記念ホール OZUを改装します。入り口にはデジタルサイネージを設置し、1階ではロビー全体を広く快適に使えるようにして椅子やインフォメーションカウンターを新調し、2階ではカーペットや座席シートの布地の張替えなどを行います。また、案内表示のサインも館内全体で一新します。

 京橋本館が建てられたのは1995年で、この規模のリニューアルは初めて。館内の意見をヒアリングしながら関係協力会社とともに細かい調整を重ねて、約2年前から計画を進めてきました。小さなスペースではあるものの、1階にはオリジナルグッズの販売コーナーも設置する予定です。

 上映や展示の企画も、共催者や関係者の皆さんと力を合わせて前年度から準備をし、実施の可能性をギリギリまで模索してきました。そのため、予定通りに開催できず、止むを得ず中止になった企画も出たことは当館としても心苦しい気持ちでいっぱいです。

 それでも、次の開館時には皆さんに安全かつ最良の環境で映画をご覧いただけるよう、そして、リニューアルを経てより多くの方に親しんでいただける場所になるよう、職員一同在宅ワークを原則に粛々と業務を行っています。

 開館まではまだ時間がありますが、家にいながらでも利用できる当館のサービスもございます。

 国際フィルムアーカイブ連盟(以下:FIAF)は、世界各地でフィルムアーカイブの上映が中止、休止となっている状況を受けて、加盟機関の映像配信サイトをまとめたポータルサイトをHPに掲載しました。

 アジア、ヨーロッパ、北米、中南米など……世界中の約60のフィルムアーカイブのコレクションへの入り口となったそのページからは、アメリカのUCLA映画テレビアーカイブではジェームズ・ディーンが出演したテレビ番組など、オランダのEYE映画博物館では世界で最も重要な無声映画コレクションのひとつ、ジャン・デスメット・コレクションなどを見ることができ、各地のフィルムアーカイブが収集してきた「映像の遺産」を巡る旅に出られます。

 当館からは国立情報学研究所と共同で制作した「日本アニメーション映画クラシックス(以下:クラシックス)」(https://animation.filmarchives.jp/index.html)、「映像でみる明治の日本(以下:明治の日本)」(https://meiji.filmarchives.jp/)という2つのWEBサイトを紹介しています。

 現存する日本最古のアニメーションや、明治期に撮られた日本映画を見られるこれらのサイトは、当館が近年始めたデジタル配信事業の成果であり、どちらも初めてづくしの試みでした。当館のコレクションがオンラインで広く共有されることで、歴史や文化への興味の開拓や、新しい創造のためのきっかけとなるように。そんな思いのもとで、2つのサイトは作られています。

 両サイトの開設・運営に携わった特定研究員の岡本直佐さんは、こう語ります。

 「コンテンツは白黒中心ですが『クラシックス』ではデザイナーさんが色合いや“団子兵衛”“ポン助”といったキャラクターを配置することにより老若男女親しみやすいものにしてくれました。『明治の日本』では白黒の映像を生かすような色合いですが“ペンギン”で親しみやすさを出しています」

 「インターネット配信に関わらず、映画のデジタル化には漸次劣化するフィルムを最善の状態で視聴できるようになる、という利点があるものの、視聴のための色再現やフィルムルックには解決されていない問題もあります。また、デジタル化後のデータの長期保存と管理という重い命題を背負いますので、現在でも課題は山積みです」

 「それでも、インターネット配信によって、限定された場所と時間でしか見ることができない、という制約がなくなる意義は大きく、国立映画アーカイブのコレクションを多くの方に色々な方法で視聴いただけるようになると考えています」

 ただ、映画の配信をするときには著作権の処理が不可欠で、これは国によって状況が異なり、日本では著作権法も何度か改定されているため、パブリックドメインか否かを知るには個別の作品を細かに調査しなければなりません。

 岡本さんと同じく、両サイトに携わった主任研究員の三浦和己さんは言います。

 「著作権保護期間については、作品の公開年を調査するところからスタートするのが一般的ですが、旧著作権法下では、著作者の没年が保護期間に影響する場合があります。特に『クラシックス』で取り上げている初期アニメーション映画は個人制作と目されるものが大半であり、著作者の死後から何年経過しているかの確認も必要と考えられました。没年については残された記録も多くはなく、これが不明であったために公開できなかった作品もあります」

 トーキー(有声)映画では、映画音楽の著作権についても別途確認が必要となります。三浦さんによると、「クラシックス」の「ポン助の春」では、音楽評論家の毛利眞人さんの調査協力を経て6つの使用楽曲全てがパブリックドメインであることが判明したため、公開できたそうです。

 「明治の日本」では、フィルムが重要文化財に指定されている「紅葉狩」や「小林富次郎葬儀」といった映画を含む6作品を配信していますが、学芸課長で主任研究員の入江良郎さんによれば、アニメーションの配信とはまた違う苦労があったそうです。

 「『明治の日本』で見られる映画は、『紅葉狩』という歌舞伎の演目にしろ、『大相撲の活動写真』に出てくる力士にしろ、本来は当時の日本人なら誰でも知っているものを写したものですが、私たち現代の観客からはそうした文脈がすっぽり抜けています。それどころか、後年に追加された解説の字幕に間違ったことが書かれていたりします(笑)。そのため映画以外の専門家の協力も得ましたが、これはリアルな出来事や人、建物、風景などを記録した実写映画だからこそ生じたことですね。しかし逆に、記録映画の公開が今後さらに進めば、もっともっとさまざまな分野で活用してもらい、そのことが映像の価値の発見にもつながっていくということも意味しているように思います」

 「クラシックス」では「大藤信郎記念館」として、アニメーション作家の大藤信郎さんの資料約140点を公開しています。これらは1970年代に当館の所蔵となったものですが、サイトを通じて皆さんに貴重な資料をご覧いただけているのは、長年に渡る大藤さんのご遺族のご理解があったからこそなのです。

 気軽に人と会うこともできず、気分が塞ぎがちになってしまうこともあるかもしれません。そんなときは、「クラシックス」や「明治の日本」、FIAFのサイトなどで、自分が生まれる以前の豊かな映画遺産に触れる旅に出てみませんか。

 開館時には感染症予防対策で、綺麗になったカーペットにも立ち位置などの誘導テープが貼られていたり、カウンターにもビニールがかかっていたり、ロビーの椅子も減っていたりなど、いろんな意味で「距離」を感じる状態になっているかもしれません。それでも私たちは、リニューアルオープンと同時に、皆さんに安心して映画に浸っていただけるよう、黙々と準備しています。少しだけ生まれ変わる国立映画アーカイブを、どうか楽しみにしていただけたら嬉しいです。

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